田中広輔、12年の赤ヘル人生を終えてもなお――“勝ちたい”男の現在地
広島東洋カープで12年間プレーし、黄金期の中心として3連覇を支えた田中広輔。戦力外通告を受けた今もなお、彼は「まだ選手。勝ちたい」と語り、現役続行への強い意志を貫いている。
プロ1年目からショートのレギュラーを奪い、2016年には全試合出場。1番打者として出塁し、菊池が送り、丸が返す――あの黄金パターンの起点にいたのが田中だった。カープの25年ぶりの優勝、そして3連覇。その中心にいた功労者であることは誰もが知っている。
しかし2019年、突然の不振に陥る。かつての武器だった盗塁は激減し、打撃も上向かず、若手の台頭もあって出場機会は減少。それでも昨季の交流戦では劇的な同点弾を放つなど、勝負どころでの存在感は健在だった。
田中広輔の主要成績(黄金期と衰退期)
田中広輔がどれほどチームに貢献し、どのように変化していったのか。主要4項目(打率・出塁率・本塁打・盗塁)に絞って振り返ると、黄金期と衰退期の差がより鮮明に浮かび上がる。
| 年度 | 打率 | 出塁率 | 本塁打 | 盗塁 | 時期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 2014 | .292 | .348 | 9 | 10 | 前兆期 |
| 2015 | .274 | .325 | 8 | 6 | 前兆期 |
| 2016 | .265 | .367 | 13 | 28 | 黄金期 |
| 2017 | .290 | .398 | 8 | 35 | 黄金期 |
| 2018 | .262 | .362 | 10 | 32 | 黄金期 |
| 2019 | .193 | .268 | 3 | 8 | 衰退期 |
| 2020 | .251 | .351 | 8 | 8 | 衰退期 |
| 2021 | .206 | .308 | 2 | 1 | 衰退期 |
| 2022 | .200 | .267 | 0 | 0 | 衰退期 |
| 2023 | .228 | .308 | 6 | 2 | 衰退期 |
| 2024 | .156 | .231 | 2 | 1 | 衰退期 |
| 2025 | .147 | .341 | 0 | 0 | 衰退期 |
黄金期の田中広輔――“1番ショート”としての完成形
2016〜2018年の田中広輔は、まさにカープ黄金期の象徴だった。
- 出塁率は.360〜.398と高水準
- 盗塁数は28 → 35 → 32と圧倒的
- 選球眼・走塁・守備が全て噛み合った全盛期
- 1番打者としてチームの攻撃のリズムを作り続けた
特に2017年の出塁率.398は圧巻で、リーグ屈指のリードオフマンとして君臨。田中が出塁すれば球場の空気が変わる――そんな存在だった。
衰退期の田中広輔――武器を失い、苦しんだ後半キャリア
2019年以降、田中の数字は大きく落ち込む。最大の要因は、かつての武器だった走力の低下だ。
- 盗塁数が激減(35 → 8 → 1 → 0)
- 打率は.193 → .206 → .200と低迷
- 小園の台頭で出場機会が減少
- 2024〜2025年は控えレベルの成績に
走れなくなったことで打撃にも影響が出て、持ち味だった「出塁して揺さぶる野球」ができなくなった。数字は厳しいが、これは多くのファンが感じている現実でもある。
ファンが語る“現実”と“願い”
田中の去就を巡って、カープファンの声は複雑だ。厳しさと愛情が入り混じっている。
1軍でどう勝ちに貢献できるかが問われる年齢
「36歳の内野手に求められるのは、もう2軍の数字じゃない。1軍でどう勝ちに貢献できるか。どの球団も世代交代は避けられないし、コーチ兼任を受け入れる覚悟がないと獲得は難しい。」
走れなくなった痛みと、武器を失った現実
「盗塁が武器だったのに、2019年からガクッと走れなくなったのは本当に痛かった。」
コーチとして戻ってきてほしいという願い
「特に2軍の若手を鍛える役割は向いていると思うし、チームに残ってほしい。」
ピークが短かったという見方
「社会人から即戦力で入ってきて最初から活躍した分、ピークが短かった印象はある。」
長く契約してくれたカープへの感謝も必要という意見
「5〜6年も成績が落ちたままだと、ここから劇的に良くなるとは思えない。」
市場全体が動きづらいオフという背景
「今年は去就が決まらない大物が多すぎる。田中だけが苦しんでいるわけじゃない。」
堂林との比較で揺れるファン心理
「堂林を残して田中を切ったのはどうなんだ、という不満もある。」
感謝と期待が入り混じる“特別な選手”
「これまで本当にありがとうという気持ちと、まだどこかで救世主になってほしいという期待が入り混じっている。」
それでも田中広輔は“勝ちたい”と走り続ける
戦力外通告直後。田中はマツダスタジアムに通い、坂道ダッシュやピラティスで体を整えていた。2軍では打率3割超えを記録するなど、状態は決して悪くない。
最終戦でも甘い球を強引に振らず、状況を優先した打席内容でベンチをうならせた。勝つために何をすべきかを理解している選手であることは、今も変わらない。
“田中広輔の第二章”はどこで始まるのか
カープの黄金期を支えたショートストップは、まだ前を向いている。経験と勝負勘を備えたベテラン内野手を必要とする球団が現れれば、再びグラウンドに立つ可能性は十分にある。
そしてファンは願っている。
「もう一度、あの背番号2が躍動する姿を見たい」と。

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